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中国の顔認証AIは世界で一番優れている

みなさん、こんにちは。

 

私は30代前半にアメリカと中国に赴任して仕事をしていました。今にして思えば、これから世界のITビジネスをリードする両国に住むことができたのは大変貴重な経験だったと思います。

 

現在、中国のITテクノロジーは物凄い勢いで発展していますが、中国がアメリカよりも優れている(=世界で一番優れている)テクノロジー分野は複数あると考えています。

 

その一つは顔認証AIのテクノロジーです。

 

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顔認証AIとは画面に映った人間の顔からその人が誰かを自動検知するシステムです。ご存知の通り、人間の顔は見る角度によって様相が大きく変わるため、いかなる角度からでも正確に検知することは非常に難しいです。

 

顔認証AIにおいて中国で定評があるのはセンスタイムと呼ばれる2014年に設立されたベンチャーです。日本にもすでに東京と京都に拠点をおいており、本田と自動運転分野で協業しています。本田としては自動運転時に歩行者を適切に検知するシステムにセンスタイムのテクノロジーを利用しようと考えているようです。

 

センスタイムはアリババからも出資を受け入れています。

 

アリババは無人コンビニの中国展開を予定していますが、その店舗で顧客を自動認識する際にセンスタイムの顔認証AIを活用したいと考えているそうです。

 

中国で無人コンビニを展開すると、ほぼ確実に商品を盗み出そうとする人がたくさん出てくると思います。そのため、不審人物を迅速に検知して警察へ通報するシステムの構築は必要不可欠でしょう。

 

現在、アマゾンがアメリカで無人コンビニのAmazon Goの展開を予定していますが、案外、センスタイムのテクノロジーを活用したアリババの方が実用化が早いかもしれません。

 

中国の顔認証AIの性能が世界的に突出している一番の要因は、画像に関するビッグデータが容易に大量取得できるためだと言われています。

 

中国の大都市には至るところに監視カメラが設置されており、中国政府が市民を監視しています。中国はチベットウイグルなど現政権に対して不満を持っている地域を複数抱えており、そのような地域での反政府活動の発生を未然に防ぐため、ITテクノロジーを使って強固な監視システムを構築したいと考えています。

 

センスタイムのようなAI開発企業は中国政府から無数の監視カメラが撮影したビッグデータを提供してもらっていると言われています。ただし、そして見返りとして、それらの企業は自社で開発した高性能なAIシステムを中国政府へ提供し、政府の監視システムの構築に積極的に貢献しているとのことです。

 

そういったことが倫理的にいいか悪いかは別にして、中国のAIは企業と政府の強固なWin-Win関係の上で急速に発展しています。政府が個人情報の管理を強く求め、ITメジャーに多額の課徴金を求めようとしている欧米とは正反対です。

 

あと先進国では個人情報は個人が特定されないように匿名加工してから使用する必要がありますが、1つ1つのデータを加工するのは非常に手間がかかります。一方、中国ではそのような加工をせずに、そのまま個人情報をAI開発に使用できます。ある意味、個人の権利が保証されていないが故の強みです。

 

画像識別のテクノロジーは今後、色々な分野で活用が期待できます。工場やオフィスの警備はもちろん商品の検品など、今後、労働集約的な分野での導入が期待でき、企業の生産性向上に大きく寄与するでしょう。

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残念ながらセンスタイムは上場していませんので、個人が株を購入することはできません。センスタイムとしてはアリババや他の投資ファンドからいくらでも資金調達できるので無理に上場する必要もないのでしょう。

 

中国ではセンスタイムのような特定分野で高い技術力や市場シェアを持つベンチャーが次々と生まれており、アリババやテンセントがそれらのベンチャーへ出資して、彼らの強みを自社ビジネスへ積極的に生かそうとしています。

 

特にアリババは中国政府が一帯一路政策(注1)のもと、メインビジネスであるEコマースやフィンテックの海外展開が見込めるため、将来性は抜群です。一方、テンセントはメインビジネスのSNSの海外展開が図りづらいため、これからの成長の余地はアリババほど大きくないでしょう。

 

個人的には、今後、アリババの株価が一時的に大幅下落し、PER(注2)が大きく低下することがあれば、底値で買いを入れたいと考えてます。

 

(注1)中国西部から中央アジアを経由してヨーロッパにつながる「シルクロード経済ベルト」(一帯)と、中国沿岸部から、東南アジア、中東、アフリカを結ぶ「21世紀海上シルクロード」(一路)の二つの地域でインフラ整備や貿易及び資金取引を促進する計画。

(注2)PERは株価収益率のことで、株価を一株当たりの当期純利益で割ったもの。私はアリババはPERが35を下回ったら買いを入れる予定です。