2020年代に急拡大するプラットフォームについて(その2:電子決済プラットフォーム)
みなさん、こんにちは。
前回、2020年代に急拡大するプラットフォームとして配車アプリを中心としたモビリティ・プラットフォームについて以下の記事で詳細に説明しました。
本日は20年代に急拡大するもう一つのプラットフォームとしてスマホ決済を中心とした電子決済プラットフォームについて説明したいと思います。
現在、特に新興国においてスマホ決済の普及がかなり進んでいます。例えば中国ではスマホのディスプレイに表示したQRコードを使って料金を支払うことが一般化しており、スーパーマーケットやレストランはおろか路上販売などでもスマホ決済を利用することができます。
新興国でスマホ決済が普及した背景としては、現金決済に対する様々な問題がありました。例えば、新興国は犯罪が多く、現金が盗難されるリスクが高いです。また偽札をつかまされるリスクもあります(私が中国赴任していた頃、偽札をつかまされた日本人をちらほら見かけました)。更に新興国には路上に十分な数のATMが整備されておらず、現金を簡単に引き出すことができません。スマホ決済はこれらの問題を全て解決することができたため新興国において普及が一気に進むことになりました。
最近では先進国でも政府の後押しなどによりスマホ決済の普及が始まってきています。日本においても今年10月から消費税増税の対策としてスマホ決済に対するポイント還元が実施される見込みです。おそらく日本においてもこれからスマホ決済の普及が本格的に進んでいくでしょう。
スマホ決済が普及するとビジネスにおいて2つの大変革が起きると言われています。
1点目として、企業による商品の生産・販売プロセスが抜本的に変化します。現在、多くの企業において、商品が想定したよりも売れず、在庫として抱えてしまう事態がしばしば発生しています。
一方、人々がスマホ決済を利用するようになれば、購買履歴のビッグデータを収集することができ、そのデータを AIに学習させれば、ほぼ正確に商品の販売予測を立てられるようになると言われています。
もし、そのような正確な販売予測が立てられるようになれば、ほとんどの企業が高い料金を支払ってでもその予測を利用するでしょう。その予測があれば、高い在庫コストを抱えることなく超効率的に商品を提供できるようになるからです。
2点目として、スマホ決済のアプリを提供している企業がアプリ上で様々な商品や金融などのサービスを直接、販売するようになり、Eコマースのプラットフォームとしても拡大していくでしょう。
現在、多くの人々がアマゾン、メルカリ、ゾゾタウンなど複数のEコマースのサイトで商品を購入していると思います。しかしながら、Eコマースにおいては将来的にスマホ決済のアプリからの集客が非常に強くなっていくと思われます。
その理由として、スマホ決済のアプリを提供している企業は人々の購買履歴のビッグデータを持っており、どのユーザーがいつどのような商品を購入するか正確に把握しており、適切なタイミングでユーザーへ商品を紹介できるようになるからです。
また、ユーザーの立場からも、様々なサイトを使うよりも、一つの電子決済のアプリ上で買い物をした方が効率的に買い物ができます。
特にスマホ決済のアプリを提供している企業が圧倒的に優位な分野はローン、保険、証券などの金融サービスです。ユーザーが日常生活で電子決済を積極的に利用するようになると、そのユーザーの与信能力や必要とする医療・生命保険、投資商品が明確にわかるようになり、非常に低い貸し倒れリスクでローンを提供したり、そのユーザーのニーズに完璧にあった保険商品や投資商品を簡単に提供できるようになります。
実際、中国においてスマホ決済アプリをおさえているアリババやテンセントはこれまで銀行が貸し出せなかった零細事業者や個人に対してスマホ経由で積極的にローンを提供しており、金融ビジネスでも高い利益が稼げるようになってきています。
上記の理由によりスマホ決済のアプリをおさえた企業はEコマースや金融商品のビジネスにおいても優位に立つようになるでしょう。
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上記で説明した通り、スマホ決済をおさえた企業は①購買履歴に関するビッグデータに基づく正確な販売予測の情報を様々な企業に販売することができ、②スマホ決済のアプリ上で様々な商品や金融サービスを消費者へ有利に販売できるようになります。この2つのビジネスによりスマホ決済のプラットフォームをおさえた企業は今のアマゾン、アップルなどのITメジャーをも遥かに凌ぐ売上げをあげる規模まで成長することが期待できます。
それでは、このスマホ決済を中心とした電子決済プラットフォームを支配する企業はどこになるでしょうか。すでにスマホ決済で購買履歴のビッグデータを獲得しており、更にはスマホ決済のアプリを経由して様々な商品・サービスを販売している中国のアリババ、テンセントが少なくとも中国においては確実にこれからも電子決済プラットフォームを支配し続けるでしょう。
中国以外の国において非常に有望な企業はVISAやMastercardなどのクレジットカード会社だと思います。例えば米国ではクレジットカードによる支払いが一般化しており、これらのクレジットカードが購買履歴のビッグデータを独占しています。
ただし、これらの企業はアプリ上で様々な商品やサービスを提供するノウハウを持っていないため、おそらくITメジャーと連携して電子決済プラットフォームを取りにくると思います。私の想像ですが、これらのクレジットカード会社はネットショッピングではEコマースのプラットフォームで支配的な地位を占めているアマゾンと協力し、スマホ決済ではスマホOSで支配的な地域を占めているグーグルと協力することになると思います。
最後にダークホースとしてはFacebookが挙げられます。以前に以下の記事で書いた通り、Facebookは仮想通貨「Libra」の発行を予定しています。今後、人々がLibraを使用するようになれば、Facebookは購買履歴のビッグデータを獲得するとともに、Facebookのサイト上で様々な商品・サービスを販売するようになると思います。
スマホ決済を中心とした電子決済プラットフォームは2020年代に莫大な売上げが期待できる非常に魅力的なプラットフォームに成長すること間違いありません。そして、このプラットフォームをおさえる可能性が高いアリババ、テンセント、VISA、Mastercard、Facebookは20年代に大きく成長する可能性が高いでしょう。今のうちにこれらの企業に投資した方がいいと思います。
なお、VISAとMastercardはVGTのETFにおいて上位に組み込まれているので、VGTを購入するのもいいと思います。私自身もこれらの企業に対しては個別株ではなくVGTを通じて投資しています。