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Facebookの仮想通貨「Libra」についての考察

ここ最近、仕事が忙しくてブログを放置してましたが、久しぶりに更新します。

 

6月18日、Facebookが仮想通貨「Libra」を立ち上げることを正式に発表しました。Libraとビットコインなどとの大きな違いは、Libraの価格は複数の主要通貨(ドル、ユーロ、円など)に連動しているという点です。

 

わかりやすく説明しますと、ユーザーがLibraを購入する場合、ドル、ユーロ、円などと交換する形でLibraを獲得することになります。そして交換された主要通貨についてはFacebookを含む100社以上の会社から構成される「Libra協会」が元本割れリスクのほとんどない銀行預金や国債などで運用し、いざという時にはLibraとの交換を保証します。

 

この保証によりLibraの価値は常に安定することが期待されます。1971年のニクソンショックの前まで世界で採用されていた金本位制と基本コンセプトは同じです。金本位制ではドルなどの主要通貨の価格安定のため、主要通貨を金と一定価格で交換することを約束していましたが、今回のLibraは金本位制における主要通貨をLibra、金を主要通貨に入れ替えているだけです。

 

私は金や主要通貨などと常に一定価格で交換可能という裏付けがない限り、その仮想通貨が広く利用されるには至らないと確信しています。そのためビットコインが広く普及することはないと考えています。

 

一方、Libraは価格が安定する構造になっているため、今後、決済手段として世界で普及していく可能性は高いでしょう。ただし、価格が一定なのでLibraを大量に購入しても大幅な値上がりは期待できないでしょう。投資の対象ではないということです。

 

それではLibraは具体的にどのような利用が期待されるでしょうか。私は①国際間の資金送金、②ハイパーインフレが頻繁に発生する国での決済手段としてニーズが高いと考えています。

 

①国際間の資金送金についてですが、現在、銀行を経由して国際送金を実施すると高い手数料がかかり、かつ送金が完了するのに1日以上かかったりします。最近ではインターネットを通じて割安に海外送金できるサービスが出てきましたが、利用できる国に制限があります。

 

もし世界中でLibraの送金が可能になれば、海外との取引のある中小企業や出稼ぎの外国人などは積極的に使用するでしょう。

 

ただし、規制面でLibraの国際送金の実現は難しいでしょう。もし人々が簡単にLibraを世界中に送金できるようになってしまうと、例えば「中国経済が崩壊寸前」などのフェイクニュースに多くの人が踊らされて、自分の資産をLibraにして中国国外に送金するといった事態が簡単に発生するようになります。そうすると一瞬にして巨額のキャピタルフライトが発生してしまい、そのことにより中国経済が実際に崩壊してしまうでしょう。各国政府はそのようなキャピタルフライトを防ぐため、Libraの海外送金には様々な制約をつけるでしょう。

 

ちなみに、マネーロンダリングなどの犯罪は、Libraを使えば全ての取引データが残るので、Facebookが金融当局に適切に情報を提示する限り、Libraの方がドルなどを銀行経由で送金するよりも犯罪の摘発をずっと容易に行うことができると思います。

 

結論としてLibraは②ハイパーインフレが頻繁に発生する国での決済手段としてまずは普及していくでしょう。ロシアやアルゼンチンなどではこれまでハイパーインフレが度々発生しているため、市民は自国通貨よりもドルや不動産などを好んで所有しています。ただしドルや不動産は日頃の決済手段としては不都合なケースが多く、そのため多くの市民が代わりにLibraを保有したがると思います。

 

Facebookとしては、一旦、Libraの普及に成功すれば、人々の資産データや消費データを掌握できるようになるため、そのデータを使って大きな利益をあげることが可能になるでしょう(例えば消費データに基づき、その人が好む商品広告をFacebook上に表示するなど)。

 

ただし、ハイパーインフレが起こる国は総じて国民所得が低いため、短期的にLibraがFacebookの収益を大きく押し上げることはないでしょう。LibraがFacebookのマネタイズの原動力になるのは2025年以降になると思います。