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香港デモ騒動の背景について

現在、香港では大規模な反中国デモが起きています。今週、デモ参加者が香港国際空港を閉鎖し、多くのフライトが欠航となる事態も発生しました。

 

今回のデモは香港政府が検討を進める「逃亡犯条例」の改正案の撤回を要求して行われました。改正案では容疑者の中国本土への移送を可能にする内容となっており、デモ参加者は、中国に反抗的な香港市民が中国本土へ不当に送られることに懸念を示しています。

 

ただし、今回の改正案は一つのきっかけに過ぎません。近年、中国の香港への影響力が強まっており、まさにそれこそが香港で頻繁にデモが起きている真の原因だと言えます。

 

日本のニュースを見ていると、香港人の大半が反中国的な考えを持っているかのように映りますが、実際には立場によって香港人の考え方は大きく異なります。私は以前、中国に住んでおり、中国人、香港人から各自の立場について聞く機会が多かったので、今回はこの点についてわかりやすく説明したいと思います。

 

まず、香港の多くの若者(主に大学生)は反中国的な考えを持っています。現在、香港は経済が停滞しており、彼らは卒業後にきちんとした仕事に就ける保証がありません。その不満のはけ口としてデモ活動を行なっていると言われています。また、若者は自由な言動を好み、それを制約してくる中国政府に対して反感を持っています。やはり、いつの時代でも若者は自由を好みます。

 

一方、香港の中高年(公務員、サラリーマン、自営業者など)の大半は、デモ活動には参加していません。彼らは本心では「現在の中国の経済発展があるのは、1980年代に中国政府が改革開放を実施した際、多くの香港のビジネスマンが工場を香港から中国本土へ移して、中国へ貢献したためだ。」と考えています。しかしながら、現在、香港政府や香港企業は、中国政府や中国市場に深く依存しており、親中的な考えを示さないと存続できません。また、自営業者についても中国本土からやってくる観光客が積極的に買い物をしてくれることで生計が成り立っているため、中国に対して悪口は言えません。そのため、多くの中高年は自分の仕事を守るために少なくとも表面的には中国政府に従う態度を示しています。まさに日本のサラリーマンが会社に対して表面的に忠誠を誓うのと同じ構造です。

 

最後に中国人の考えですが、彼らの多くは反発的な香港人に対して快く思っていません。中国人は香港人に対して「せっかく英国の植民地から脱却して、中国に返還されたのに何が不満なんだ。しかも、1国2制度を設けて、かなり香港に配慮してやっているのに。」「もはや、中国は香港を経済的にも追い越し、香港は中国に食べさせてもらっているんだ。その現状を素直に認めろ。」といった考えを持っています。

 

私の推測ですが、香港の中国への経済的依存が強まる中、中国人の意を受けた中国政府が親中の香港人を使って、これからも制度的にも経済的にも、香港の中国への統合を進めていくでしょう。親中の香港人は行政やビジネスにおいて社会的地位の高い人たちが多いのでどんなに香港の若者が反発したところでその流れを変えることはできないと思います。

 

ちなみに私は香港株式市場に上場している中国企業には投資をしていません。それは香港の中国への統合が進む中、香港ドルの取り扱いがどうなるかよくわからないからです。

 

現在、香港では米ドルにペッグされている香港ドルが公的通貨として使われており、香港株式市場へ上場している企業の株式を購入する際にも香港ドルで購入する必要があります。

 

しかしながら、今後、香港の中国への統合が進む過程で、香港ドルが廃止になり、中国元に強制切り替えになる可能性もゼロではないと思います。また、その際の切り替えレートによっては資産が大きく目減りする可能性もあるでしょう。中国政府は個人の反発を無視してドラスティックな改革をよくするので。。。

 

香港株式市場に上場しているテンセントや中国平安保険はAIの開発などを積極的に行なっており、投資先としては結構有望だとは思うのですが、今後の香港の状況を考えるとなかなか投資はできないと考えています。