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996問題は中国IT企業の成長性の高さを示していると思う

現在、中国ではIT業界における996問題がクローズアップされています。

 

996問題とは、中国のIT業界で午前9時から午後9時までの12時間を週6日間働くことが一般化していることを示しています(実態はもっとひどいという話もありますが・・)。

 

私は2年ほど前まで中国で働いていましたが、その頃から中国のIT業界の猛烈な働きぶりは現地で度々ニュースになっていました。例えば、IT企業が集積している北京の中関村で午後10時以降も多くのオフィスで電灯の灯りがついている状況がテレビで報道されたりしていました。

 

日本では働き方改革が進行中であり、従業員の労働環境の改善が急ピッチで進んでいます。そのような背景もあって、日本では中国の996問題を否定的にとらえる傾向が強いように思います。

 

しかし、私はこの996問題について別の見方をしています。それは、この問題は中国のIT業界がまだまだ成長の余地が高いことを示しているという見方です。

 

1970年から1980年代にかけて、日本も多くのサラリーマンが猛烈に働いていました。なぜ、彼らは猛烈に働いていたかと言いますと、その時代、日本は高度経済成長期であり、市場が急拡大しており、会社としては従業員を長時間働かせることで、着実に売り上げを伸ばすことができ、従業員も昇給や割増しのボーナスでその恩恵を受けることができたからです。まさにこの好循環によって1980年代後半には日本企業が世界時価総額ランキングで世界上位を独占するに至ったのだと思います。

 

一方、現在、日本の多くの会社は従業員の労働時間を削減することに力を入れています。やはり過労死などの問題により、日本企業としても従業員の健康を重視せざるを得なくなってきたのでしょう。

 

ただし、それ以外にも、もはや日本企業は従業員を猛烈に働かせても業績がよくならなくなっていることが、従業員の労働環境の改善に大きく影響していると思います。

 

現在、人口減少に伴い、すでに日本市場は飽和状態にあり、海外市場もアメリカのITメジャーや中国企業が席巻しているため、多くの日本企業が、これから高い売り上げをあげて、大きく成長していくことが難しくなっています。

 

このような状況の中、日本企業としては、もはや従業員を長時間働かせる必要性がなくなっており、むしろ無駄な残業を削減したほうが残業代の削減を通じて利益を増やせる状況になっているのだと思います。つまり、インプットを増やして売り上げを伸ばせるフェーズから、インプットを減らしてコストを削減したほうが業績がよくなるフェーズへと変わってきているということです。ビジネスは成熟化するにつれて、このように費用を最小化して利益を絞り出すことが合理的になってきます。

 

また、日本の大企業は年配者を中心に人がだいぶ余っており、残業問題については、そのような人へ仕事を適切にシェアすれば、比較的容易に解消されるでしょう(ただし慢性的に人材不足であるベンチャーなどは例外です)。

 

一方、中国のIT業界では中国社会のデジタル化が急ピッチで進んでおり、至るところに大きなビジネスチャンスが転がっています。そのようなチャンスを他社に先駆けてつかむためには従業員に猛烈に働かせることが一番効果的なのだと思います。

 

更に中国のIT企業は従業員の平均年齢が非常に若く、時間的に余裕のある年配者がほとんど存在せず、結果、みんなが忙しいため、仕事を他人へシェアできない状況にあるのでしょう。それは見方を変えると、中国のIT企業は日本企業と比べて、高給取りだけど仕事があまりない年配者を抱えていないため、生産効率が格段に高いと言えます。

 

正直、私はどんなに給与が高くとも中国のIT企業で働きたいとは思いません。。。気力みなぎる20代ならばまだしも、30代後半である今の年齢で1日12時間、週6日間働き続けたら、1年ももたずに心が折れる自信があります(苦笑)。子供と過ごす時間を確保するためにも週末は2日間休みたいです。

 

従業員の立場から言うと、中国企業で猛烈に働くよりも、日本企業でワークライフバランスのとれた働き方をする方が幸せだと思います。仕事も大事ですけど、家庭や自分の時間もそれと同じくらい大事ですしね。

 

私は中国のIT企業は働き先ではなく投資先として有望であると考えています。996問題を見る限り、中国のIT企業は従業員が猛烈に働くことで、これからもどんどん成長していき、株価も長期的に上昇を続けると思います。日本人としてはアリババやテンセントなどの株式を保有し、キャピタルゲインを狙っていくのがいいでしょう。

 

ちなみに中国本土の株式市場に上場している企業の個別株や中国の株式市場に連動している投資信託及びETFに投資するのはおすすめしません。中国政府は中国市民が持つ資産の海外移転について厳しい規制をかけており、そのため、中国国内のマネーの多くは国内の不動産市場や株式市場へ流れ込む傾向が強く、中国本土の株式市場は常に割高で、海外投資家にとってあまりうまみがありません。

 

上記の理由から、中国企業に投資するならば、香港やニューヨークの株式市場に上場しているハイテク関連の中国企業に投資するのがいいと思います。ちなみにテンセントは香港、アリババはニューヨークの株式市場に上場しています。